190話「何者にもなれなかったあなた達へ」
なんなんだあの死闘…。全員チートすぎる…。
ファンタジー寄りの漫画だったらこういう展開は全然あるけど、金カムはもう少し現実的というかほんとうにただの人間として見てたので、え?こんなに傷を負っててもまだ動けるの!?
というのが序盤の正直な感想。
でもまあ、先週、卒塔婆作るかなどと話してたのに、全員無事でなによりだ。
鯉登の軍刀に閃光が走る。
キロちゃんの最後の悪あがきを制し、部下たちを守った。この鯉登の意地が、これまで割とギャグ要因として扱われてきた鯉登の見せ場だったと思う。決してサーカスではないと。いや、サーカスもよかったけど。
さてキロちゃん。
もう革命家でもテロリストでもない。
手負いの猛獣にされてしまった。
彼は最期に野生の虎になった。
しかしアシリパの登場で、視点が反転する。
誰が敵で誰が味方なのか。そんな役割はこの漫画にははじめから存在していなかったと思い出させる。
『天から役目なしに降ろされたものはない』
これは完全な私の主観なんだが、そもそも人間が生まれてきた意味などないと思ってる。
分子やら素粒子やらの偶然の結びつきが重なり、この世に生をもたらされた。
本人の意思など無関係に。それゆえにこの理不尽さに抗うために必要だったのが「生まれてきた意味」という、理由なんだと思う。
大昔からの伝承などは、願いであり処世術なんだと思う。
生まれてきた意味、役割があると信じていなければ、自分の意思の外で作られた「自分」という存在があやふやになってしまうからではないかと。
結局のところ、キロちゃんは目的は最後まで果たせなかったが、アシリパがこの旅で金塊にまつわる鍵やアチャの真意を思い出せたのなら、無駄ではなかったと。アシリパを杉元から引き離し、ウイルクの足跡を辿ることで、その目的はアシリパに引き継がれた。
私はこれまでアシリパは、大人達が持つそれぞれの信念のために振り回されているように見えていた。
だが、これはあくまでアシリパの意思があっての行動なんだと気付かされる。
ただ金塊という莫大な資金を得たいがための大人達は、むしろアイヌ民族の存続に群がっているだけなのではと。
人の意思が複雑に絡まりあう中で、彼女はアイヌのジャンヌダルクになることを、自ら買って出る覚悟を身につけたのかもしれない。
明日へ。受け継がれた未来がどうこの物語を紡ぎ、そして大人達はどこを目指すのか。
ここでアシリパと先遣隊が合流したのなら、チームは再編成する必要が出てきた。
さて、アシリパにチタタプしてヒンナヒンナしてほしいと訴えた杉元は、このアシリパの決断をどう捉えるのか。
そして軍曹たちは金塊の鍵を思い出したアシリパを中尉の元へ連れて行かねばならない。谷垣はアシリパをフチの元へ連れて帰りたい。
とりあえず君ら腹減ってるだろうから、1回ごはんでも食べながらゆっくり考えなよ。
キロちゃんの回想シーンでけっこう無駄なことしてたなと言ったが、その無駄なこともずっとテロリストしての逼迫した人生のつかの間の良い思い出になればいいと思う。
リパさんもね、札束握りしめて楽しそうにしてたし(ていうか絶対リパさんが、おもしろそうだからおまえら出ろ!って言ったよね)
尾形はやっぱ接近戦には向かないとわかったし。裸になるとドヤる君はなんなんだ。確かにいい身体してるけど。
陰影でも陰毛でも構わない。あの眉毛から想像するに、絶対尾形、陰毛濃い方だろ?と私は信じてるから。