どぶろく

ゴールデンカムイの感想を毎週木曜日に更新しています。

211話「正論ビンタ」

冒頭で言うのもアレだが、白石、もうおまえそれ、血じゃね?飲みすぎて胃が荒れてんじゃないの?屁こいてる場合じゃない。

白石が杉元にド正論ビンタをかましてくれて朝からすっきりしましたおはようございます。

「金を渡す未亡人はどうした!」
今年一番の「それな!」が出た。それな!オブザイヤー白石。
そうなんです。
以前このブログでも書いたように、なーんか杉元ってアシリパモンペになってね?っていう私の心配を白石がバチン(物理)と言ってくれた。
酩酊して事後の人間の発言とは思えないくらい的を得てる。ゲロ吐きながらとは思えないくらい、まっとうなことを言ってる。
いやまあ結局、自分の金の分け前を案じての発言だったけど。言ってることはめちゃくちゃ正しいよな。
この時までの杉元、アシリパさんを引き渡すかどうかの権利が自分にあると思ってる。だからこんな日よった顔してしょぼくれてるんです。
過保護になっちまってるんです。
アシリパさん、鶴見のところに行って大丈夫かな、って。
鶴見の元に下るかどうか、金塊の暗号の鍵を話すかどうかの決断は、アシリパ本人にあるのに。
杉元は初めてアシリパに会った時に、交わした契約のことを忘れていただろう。
アシリパさんは知恵を貸してくれ。
彼らは互いに得手不得手を補うことで、同じ目的に向かう同志だということを。
それがどうだろうか。
元々の目的を見失いつつある杉元は、アシリパが背負ったアイヌの運命の重さに心配するばかりだ。
だがアシリパは違う。
樺太で見てきたものは、彼女の決意を大きく変えた。だからこそのあの活動写真に躍起となるアシリパ監督が生まれた。(結局あれどうなったんだろ)
アシリパは杉元の知らぬところで、アイヌの未来を牽引することを選んでいたのだ。案ずることも、引き留められることも必要ない。
アシリパが決断したことを信じ、共に駆ける同一線上の立場にある、それがアシリパと杉元なのだ。

アシリパが空に放った矢を、瞬時に毒矢だとうそぶいた杉元。
アシリパは杉元を相棒だと信じていた。白石に正論をかまされなければ、「何やってんだアシリパさん!」とでも批難しただろう。
抵抗せず、大人しく鶴見軍門に下るのが、アシリパにとっても最良だとばかりに。
だがそれではアイヌの未来は切り開かれただろうか。
杉元は白石に「土方のようにアイヌを背負わせて戦わせるような…」と言った。杉元はこの時点では、アシリパアイヌの未来のために戦うことを拒んでいると考えていた。いや、アシリパがそう思っていたかどうかではなく、杉元自身がそれを拒んでいたのだろう。
のっぺらぼうに言ったように、「山で熊狩ってヒンナしててほしい」
杉元はアシリパに庇護欲を抱いていたのかもしれない。父親によって、ウイルクという人間が父親であったがために、民族の継続のために戦いに巻き込まれる、かわいそうなジャンヌダルクだと。親のエゴにより、無垢なアイヌ少女であり続けることができない、悲惨な運命を背負わされたと。

だが、かわいそうかどうかを決めるのはアシリパ自身だ。
他人が、人の人生や行く末を主観で判断することの残酷さ。
ウイルクはたしかに親のエゴをアシリパに託したかもしれない。だが、アシリパもまた、アイヌ民族なのだ。
他所から移り住み、巻き込まれてしまったわけではない。彼女にも、ウイルク同様にアイヌの血が流れている。
それを再確認したのが、樺太での出来事であり、キロランケが命をかけてアシリパに見せた景色なのだ。
アシリパも、ウイルクと同じく、アイヌの未来を案じる民族のひとりなのだ。
だから、指針を決めるのはアシリパ自身であり、他人がどうこう言うのはお門違いでもあるのだ。

そうしてアシリパはひと目鶴見を見ただけで決めたのだ。信用に足らぬと。
まああんな虚無みたいな目を向けられたらそりゃあ逃げたくもなるわな。
おそらく谷垣から聞いた、鶴見は日露戦争で親兄弟夫らを亡くした人達へ仕事を与え〜なんて話は師団の兵士たちを動かすための方弁だと気づいたのだろう。
まったくの嘘ではないが、その先にアシリパが相容れぬ計画が潜んでいると、肌で感じるには充分な対面だった。
誰も殺さず、第七師団の面々を巻いたアシリパの判断力。そこに鶴見はかつてのウイルクを見たのだろうか。