どぶろく

ゴールデンカムイの感想や個人的に気になったことをまとめています。

【ゴールデンカムイ】尾形が花沢中将の息子であることは、どこから漏れたのか

今回話数や巻数は関係なく、ふと疑問に思ったことを書き殴る回。

 

そもそも、勇作が尾形を認識していることがおかしくないか?

 

だってふつう(この時代のふつうがまずわからんけど)自分の息子に「俺には芸者に生まれた子供がいる」なんて話すか?

この時代、妾腹は珍しくない話であっても、幸次郎は尾形とその母親を無視し続けたわけじゃない?存在自体を自ら否定してきた。下手したら、尾形が息子なのか娘なのかさえ、知らなかったかもしれない。

なのになぜ、勇作は腹違いの兄がいると知っていたのか。そしてその異母兄が第七師団にいることさえも知っていたのか。

 

父親が話したとは考えにくい。

では誰が勇作に話したのか。

 

鶴見か?

 

21巻までを読んだ私の中で一番可能性が高いのは鶴見である。

鯉登少年誘拐事件に関与させられていたメンバーのうち、わかっているだけでも月島は鶴見劇場のシナリオの一役として、意図的に配下になるよう仕組まれていた。

となると、尾形にも鶴見劇場の演者に招き入れられた可能性がある。

 

ここからは完全な憶測だが、鶴見はなんやかんやで花沢中将に妾に産ませた子供、それも息子がいるとう情報を得る。

これももしかすると、花沢中将暗殺をかなり早い段階から企てていたため、身辺を調査して行き着いたのかもしれない。

 

鶴見は尾形が第七師団に入隊するよう謀った。

だいたい、茨城出身の尾形が北海道の第七師団へ入隊していることが不自然にも思える。

本来なら特別な理由がない限り、東京の第一師団、もしくは宇都宮の第十四師団へ入隊しているのが自然だ。

Wikipediaより

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E9%99%B8%E8%BB%8D%E5%B8%AB%E5%9B%A3%E4%B8%80%E8%A6%A7

 

月島の回想でも、新潟の三角眉毛のあいつは、第二師団であった。

ちなみに第二師団は現在の仙台市に設立され、仙台の歩兵第4連隊、青森の歩兵第5連隊、新潟県新発田の歩兵第16連隊、仙台の歩兵第17連隊の4個歩兵連隊を基幹としている。

よっぽどのことがない限り、徴兵される際は在住ないし出身地域から、そう離れていない場所に本営地を置く師団に入隊することになっているようだ。

 

八甲田遭難事件で有名な第八師団も、ほとんどが地元青森や東北の人間で構成されていた。

つまり、尾形は誰かの計らいによって、父親が所属する第七師団に入隊する運びとなったと考えられる。

まず、茨城出身の尾形が、屯田兵を中心に構成された第七師団に入隊していることが不可解なのだ。

異例はあっただろうが、そのへんまではよくわからん(雑)

 

鶴見は、尾形を懐柔し花沢中将を暗殺させることを目論んでいた。

なぜ尾形なのか。

それは月島同様、恩を売るためであろう。

無視され続けた息子が父親に抱いている感情。憎しみがないわけがない。そこに目をつけた鶴見が、復讐のチャンスを尾形に与えた。

おそらく鶴見は母親が死んだのも、尾形が手をかけたとまでは知らない。まさか幼い息子が母親を毒殺したなどという事実が広まれば、尾形家は村八分にされるだろう。この辺は祖父母が隠蔽したか、そもそも祖父母は尾形がやったことにすら気づかなかったかもしれない。

なんせ自ら「ばあちゃんっ子だった」と語った尾形は、祖母からは愛情を受けて育ったのだろう。

祖母が尾形が自分の娘を毒殺したとわかっていたなら、愛情を持って育てることは難しい。

鶴見は、尾形母は幸次郎への恋慕の拗れにより死んだかなんかだと思っているのかもしれない。

どちらにせよ、母親を殺さなければいけなかった要因は父、幸次郎にある。

幸次郎に無視され続け気が触れた末に亡くなった。この事実さえあれば、尾形は父親に対する憎悪を抱いていると想像するに容易いだろう。

 

さらに勇作の存在。

誰もが、尾形は勇作に対し、「父親に愛情を注がれた子供」として疎ましく思っている。そう考えてしまうだろう。

同じ軍人の血が流れているにも関わらず、片や陸軍学校へ通わせてもらい、少尉として尾形の前に現れたのだ。

母親が違うだけで、分断された兄弟の人生。

鶴見は勇作の性格までも把握していたのかもしれない。

あの時代は一人っ子は珍しく、兄弟に羨望を抱いていたかもしれない勇作に、兄がいることを伝える。それも同じ第七師団にいると。

勇作はあの通りの性格なので、純粋に兄がいたことを喜び、無邪気に尾形を「兄様」とまで呼んだ。

全然関係ないけど、「兄様」のイントネーションが「アニサマ」と同じなことをアニメで知った。

アニサマとは?

https://anisama.tv/2020/index.html

 

 

 

運良く、花沢中将の嫡子をこちらに手懐けられれば、鶴見大勝利の可能性さえ見える。

第七師団を我が物にするには、花沢中将は二百三高地以前から、鶴見にとっては目の上のたんこぶのような存在だったのかもしれない。

まあどういう理由があるにせよ、鶴見劇場親子二代の法則を利用するには、尾形は鶴見にとってうってつけの人物だっただろう。

 

 

尾形自らが進言した可能性

これは前途に比べれば薄いのだが、可能性としてゼロだとも言い難い。

 

尾形自身が、母親ないし祖父母から、父親が花沢幸次郎だと聞き、彼の在籍(であってんのか?たぶん違うな)していた第七師団への入隊を志願する。

そこでそれとなしに、自分は花沢中将が妾に産ませた子供だと触れ回る。

まさかそんな冗談…と鼻で笑って済ますことのできない、尾形の容姿。とくに眉毛。

噂話は男所帯だろうと、閉ざされた集団の恰好の娯楽となりどんどん拡散されていく。それがデマだろうとなんだろうと、おもしろければ拡がる。

どこかで見た図式だろう。Twitterと同じ原理だ。

そうして鶴見の耳にも、その噂が入る。

 

まあ、こんなパターンもありえなくはないかなと。

しかしなぜ尾形が、自分が花沢中将の妾腹の子だと言い出したのか。

試したかった。

勇作が死んだら父親が自分を愛おしく思うのではないか。

その為に第七師団に入隊し、勇作を撃つ機会を得る必要があった。そのお膳立てとして、鶴見が自分を利用するように仕向けた。結果、花沢中将の暗殺の役目が回ってきた。

父親が、亡き本妻との間に産まれた息子の代わりに、自分を切望するのかどうかのトライアル実験とでもいうのだろうか。

敵を殺めてなんぼの戦争の中で、敢えて不殺の偶像になることを求めた勇作の死後、そのお鉢は尾形に回ってくるのかどうか。

しかし幸次郎の答えは「何かが欠けた不出来な倅、呪われろ」だった。

それを言われた尾形は微笑した。

僅かな祝福を得られる可能性があったにせよ、想定内の答えに満足した。私にはそう見えた。

 

そして尾形は用済みとなった第七師団から脱走した。

 

…ってのも、なくはないかなと。

 

まあどちらにせよ、どちらでもなくても、この真相が原作で語られることはあるか。

当時の戸籍の扱いがどうだったかまではわからないが、今よりも調べることは容易いと考えれば、誰かが尾形の出自を暴いたか、自ら口にしたかのどちらかだろうと、今の段階では想像している。

 

一体、尾形、勇作、そして第七師団の誰もが知っていた、尾形百之助は花沢中将の妾の子であるという出自の謎は、これからも気になる謎である。